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学校の組織開発物語

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連載3-2/本音をぶつけあい危機を乗り越える。対話と仕組み化で次世代へつなぐ組織づくり【常磐大学】

19 時間前
読了時間: 11分

常磐大学で学生主体の活動を展開する「コミュニティサービス連合」の取り組みについて紹介してきた本連載。ボランティア団体「TRICOLOR(以下、トリコロール)」で、サブリーダーを務めたYさんのインタビュー後半をご紹介します。前回、活動をとおして自己理解を深め、よりよい組織づくりに向けたファシリテーションを実践する様子を語ってくれたYさん。その裏には、「対話」の重要性に気づくきっかけとなった同級生との激しい衝突もあったそうです。ガチンコのぶつかり合いを乗り越えて相互理解を深め、次世代のために「仕組み」を残そうと奮闘する姿に迫ります。(全2回の後半)

 

 

――Yさんは2年生になってから、トリコロールで何らかの役職に就いたのですか?

 

Yさん はい、2年生の後半に企画チームのメンバーになりました。そして3年生では、「子ども支援」※注の枠組みのリーダーを務めるとともに、トリコロール全体のマネジメントもするサブリーダーになりました。

 

※注:トリコロールでは「子ども支援活動」、「地域支援活動」、「震災復興支援活動」の3つの領域におけるボランティアを企画・運営している

 

 

――それは自分で希望してなったのですか?

 

Yさん 2年生の時に、トリコロールが活動にすごく熱があるタイプと、消極的なタイプに二極化してしまったんです。その時に発足したのが、企画だけを担当してトリコロールのマネジメントもする「企画チーム」と、当日のみ参加するメンバーに分かれた運営体制でした。

 

 

――体制変更することになった理由は?

 

Yさん 私の代で一気に所属メンバーが減ってしまったんです。私が1年生の時は全体で130人くらいいたのですが、2年生に上がる時に先輩方が卒業し、下の代も例年より入ってこなかったので、一人一企画は何かしらのリーダーを担当しないと回らない体制になってしまって。夏休み前半までは、誰かしらが企画のマネジメントを経験しようという方針でしたが、後半からは、ボランティアを企画するメンバーと、当日のみ参加するメンバーに分かれて活動することになりました。

 

 

――企画するほうを選んだのはなぜですか?

 

Yさん 私は1年生の時はちゃらんぽらんに過ごしていたのですが、2年生になって学びの面白さに気づき、トリコロールにハマっていきました。誰かが企画のリーダーをやらなければならないとなった時、私は人の下にいるよりも先頭に立ちたいタイプだったので、自分で考えたものをつくり上げたくて企画チームに入りました。

 

 

――3年生で子ども支援のリーダーと全体のサブリーダーになったのは立候補ですか?

 

Yさん それは副顧問の関さんから頼まれてのことでした。私自身は、企画チームの時に散々な言われようをして心が折れていたんです。

 

 

――どんなことを言われたのですか?差し支えなければ教えてください。

 

Yさん 企画チームには10人くらいしかいないうえに、同級生で女の子は私一人だったからか、「男の子たちVS私」みたいな対立構造になってしまって。私の発言に対して、「何を言ったか」という中身ではなく「誰が言ったか」ということにフォーカスされてしまい、私のいる意味がないと思うようになっていました。「こいつらとは絶対にやりたくない、人の意見も聞けないくせに」と不満が溜まり、2年生が終わる段階で、もうトリコロールを辞めようと思っていたんです。

 

 

――そんな衝突があったんですね。

 

Yさん でも関さんから「Yがいないとトリコロールは回らない」とうまく説得されまして…。それに、男の子たちとは企画チームの時にバチバチにやり合ったからこそ、本音を言い合える関係になれた部分もあったと思います。それで、一番主体的に活動できる学年だからこそ、3年生の間、もう1年チャレンジしてみようという気持ちになりました。

 

 

――関さんからの依頼はあったとはいえ、自分自身で「やろう」と思えた要因は何ですか?

 

Yさん 2年生の時は私自身も幼かったので、何か言われたら「自分も言い返す」「牙を向かないと負けちゃう」と思っていました。ミーティングも合戦みたいなイメージで「鎧をつけていないと心が死んじゃう」と思いながらやっていました。でも、何度もぶつかり合いながらも、それぞれの特性を理解する時間があったからこそ、仲間たちの性格や考え方を深く理解できました。「この人はこういう時に上手く場を回してくれる」「スタートダッシュはあの人に任せて、全体を俯瞰して見てもらうのはこの人にしよう」といったように、うまく人付き合いを学んでいきました。そうこうして、3年生でうまく人を回せるようになったからこそ、今活動を続けられているのだと思います。

 

 

――ガチンコでぶつかったからこそ、その人たちの特性や持ち味、何に向いているかが見えてきたんですね。でも、そういうガチンコでぶつかっていた人たちと3年生になっても一緒に仕事をしていたわけですよね。それはYさんの気持ちや対応の仕方で関係性が変わっていったのですか?

 

Yさん 2年生の時に一度、ミーティング中に企画チームのメンバーが関さんから雷を落とされたんです。私たちはお互いの考えを頭ごなしに否定して、言われたら言い返すような状態で、「お前らは何を考えている、そんなことで組織が良くなるわけがない」と。当時、活動に消極的なメンバーも多くて組織の存続の危機にありました。ミーティングに集まっていた熱意のあるメンバーだからこそ「まずは人の話を聞け」と初歩的なところで説教されたんだと思います。

そこからお互いに歩み寄り、話を聞くようになりました。もちろんできていない部分もありましたが、「誰が言ったか」ではなく「何を言ったか」に少しだけフォーカスしてもらえるようになったと感じています。

 

 

――なるほど。ぶつかりあいも、組織の成長に必要な、非常に重要な時間だったんですね。きっとみんなで気づけたのは、それまでのたくさんのやり取りがあったからでしょうね。

 

Yさん それに、自分たちに正面から向き合って叱ってくれる大人の存在ってなかなかいないと思うんです。自分たちの面倒を見てくださる大人の人はすごく貴重で、その時は関さんの存在の大きさを改めて実感しました。私たちと真摯に向き合ってくれる、ある意味「お父さん」のような大切な存在だな、と。

 

 

――関さんに怒られたことで、自分たちの姿を客観的に見ることができたわけですね。

 

Yさん 客観視することで、自分たちの未熟さと向き合う時間を(半ば強制的にですが)作ることになり、「私たちは今、最低ラインにいるんだ」と気づかされました。でもそれが、結果的に自分や相手の強みや弱みを、お互いに深く理解し合う時間になったと思います。

 

 

――そのこと自体はマイナスな経験でも、振り返ってみるとすごく学びにつながっているのではないでしょうか。それが、先ほどおっしゃっていた「次世代のために組織を整える」という想いにつながっていくのですね。自分の経験を次にバトンタッチすることで意識していることはありますか。

 

Yさん 私は人間関係をどうこうすることはできないので、仕組みの部分でできることを考えたくて、後輩にはファシリテーターのやり方や、情報共有の大切さ、議事録の大切さなどを伝えました。議事録には決まった内容を羅列するだけでなく、どういう経緯で決まったのかを書き、誰が読んでも納得できるようにするなど、日常の小さなことの積み重ねが大きいことにつながると考えています。次世代に向けて、リーダーたちにはノウハウを教えることも大切ですが、もっと小さな部分も伝えていきたいです。

また、私が3年生のリーダーを終える頃に力を入れて取り組んだのは「資料のマニュアル化」です。以前は資料の作り方で揉めることが多く、書き方や表現の仕方で言い争いもありました。それをマニュアル化することで、資料作成にかかる時間を減らし、その分メンバーと向き合う時間を増やせるようにしたんです。仕組みができたことで、次世代が活動しやすくなっていればいいなと思います。

 

 

――これらの経験を通して、Yさんは組織やチームが強くなっていく時に何が一番大事だと思いますか。

 

Yさん 一番はやはり「対話」、どれだけコミュニケーションを取るかだと思いますね。自分が考えていることは相手に言わないと伝わらないし、相手の考えも聞いてみないと、自分の想像が合っているか分かりません。私自身はメンバーと本音でぶつかり合えたからこそ、相互理解を深められたと感じています。どれだけ心の中に秘めていても、言葉にして伝えなければ前には進めません。だからこそ、組織が変わる時に求められているのは「対話」ではないでしょうか。

 

 

――なるほど。ありがとうございます。

話題は変わりますが、Yさんはラーニングバリューが主催する「オンライン学びあいキャンパス」にも参加いただいていますよね。そのことに関して感想などあれば聞かせていただいてもいいですか?

 

Yさん 私たち自身の活動と向き合う時間になりましたし、他団体のみなさんとお話しする中で「そういう考え方もあるんだ」「こういう組織体制や連絡手段もあるんだ」と知ることができました。組織のあり方は多種多様で、トップが一人であとはみんな横並びの組織もあれば、私たちのように細かい階層に分かれているところもあります。普段関わることのない他団体の方や社会人の方からのフィードバックは刺激になりましたし、アドバイスもいただけて、とても貴重な機会になりました。

 

 

【「オンライン学びあいキャンパス」とは】

ラーニングバリューでは2016年からField of invaluable learning(略称:Fil)と称し、学生団体に所属している学生・教職員が大学や団体の垣根を越えて活動の悩みや課題を共有し、オープンに語り合い、学びあうイベントを開催しています。コロナ禍を境にオンライン化し、「オンライン学びあいキャンパス」として開催。常磐大学さんには旧TSSの頃から参加していただいており、2026年は話題提供校としてコミュニティサービス連合の「トリコロール」に発表していただきました。

 

 

――Yさんは、トリコロールだけでなく、フリーペーパーを制作する活動を行う「くるり編集部」にも所属しているそうですね。どういう経緯で参加することになったのか教えてください。

 

Yさん くるり編集部には、3年生の秋頃に入部しました。当時、部員が3名しかおらず、そのうち2名が4年生だったため、存続の危機に陥っていたんです。

ちょうど私はそれまで務めていたトリコロールの役職を退くタイミングで、「このままでは自分らしさがなくなってしまうのではないか」と漠然とした焦りを感じていた時期でした。何か新しいことにチャレンジしたい、トリコロールのサポートをするだけでなく、自分の強みをさらに伸ばしていきたい、そう思ったことが、入部のきっかけです。

 

 

――今はどんな状況ですか?

 

Yさん 今年は新入部員がたくさん入ってくれて全体で10人の組織になりました。トリコロールでは組織のマネジメントや企画に力を入れていましたが、くるり編集部ではデザインを通して、地域のみなさんや常磐大生に向けて生活がワクワクするような情報をお届けするフリーペーパーを作っています。私はまだ人に教えられるほどの立場ではないのですが、ありがたいことに副編集長という肩書きをいただきました。自分の得意なデザインや文章作成のスキルを伸ばしながら、読者に伝わりやすいデザインについても、これからしっかりと学んでいきたいと思っています。

 

 

――活動人数も増えたら、トリコロールでのマネジメント経験も活かせそうですね。

 

Yさん トリコロールは最大で100人を超える規模の組織でしたが、くるりは10人という少人数の体制です。大人数と少人数ではマネジメントの違いがあり、私自身まだこの規模に慣れていない部分もあります。ただ、根底で大切にしなければならないことは同じだと思っています。ミーティングに向けた事前準備の大切さや、メンバーが発言しやすい関係性を作るために日頃からコミュニケーションを重ねるなど、トリコロールでの3年間の学びを、くるり編集部でのこの1年間にしっかりと活かしていきたいです。

 

※肩書・掲載内容は取材当時(2026年4月)のものです。


アメリカの心理学者ブルースタックマンは、チームの成長プロセスを5つの段階で示しました。それは「形成期(Forming)」「混乱期(Storming)」「統一期(Norming)」「機能期(Performing)」「散会期(Adjourning)」の5段階です。Yさんのインタビューから感じたのは、彼女の体験が「混乱期(Storming)」を乗り越えた後の価値を表していたのではないかということです。

Yさんは2年生の時、企画チームの仲間の男子たちとぶつかり合って、一度は心が折れていたとおっしゃっていました。しかしその経験があったからこそ、お互いの特性や性格、考え方を深く理解し合ったようでした。このぶつかり合っている様子は、傍から見ているとすぐに介入したくなるものかもしれません。もっと仲良くやればいいのに。なぜお互いの話をちゃんと聞き合わないんだろう。第3者としてそういう場面に出会われた方もきっといらっしゃることと思います。しかし関さんはすぐにはそういう介入はされなかったようです。Yさんが一度は心が折れるほどの状態まで、なんとか自分たちで解決することを見守っていらっしゃったように思います。そのうえでのYさんのいうところの「雷」を落とされたわけです。曰く『お互いの考えを頭ごなしに否定して、言われたら言い返すような状態で、「お前らは何を考えている、そんなことで組織が良くなるわけがない」』と。きっとYさんに限らず対立していた男子学生の中にも、自分たちのやっていることへの後ろめたさだったり、でも負けたくないという気持ちだったりが、あったことでしょう。そのタイミングでの「雷」だったことが、自分たちを振り返り、客観視できるようになるきっかけになったのではないでしょうか。

人が自己理解を深める際には必要な体験や時間がある、と今回のインタビューを通して改めて思いました。組織的な活動の大きなメリットは、そういう体験をするチャンスに恵まれているということでしょう。しかし、いかに「混乱期(Storming)」の段階を見極め、どんなタイミングで介入していくのかというのは、組織を率いてる方々や外から見守る役割を担った方々には難しい課題であり、でもとても重要なスキルのように思いました。

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