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学校の組織開発物語

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連載3-2/トップダウンから持続可能なチームへ。組織の成熟が学生を自走させる【日本工業大学】

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日本工業大学のオープンキャンパスを学生主体で運営する「学生広報スタッフ」について紹介してきた本連載。最終回は、前回紹介したKさんとともに、急拡大する組織の土台づくりに奔走した工学研究科電子情報メディア工学専攻(大学院1年)のIさんにお話を伺いました。カリスマ的リーダーであるKさんとは正反対の几帳面で慎重な性格(ご本人談)を活かして補佐役を務め、後輩たちにも目配りを欠かさず組織を下支えした名参謀です。ご自身の大きな成長につながったと語る組織運営の苦労からやりがいまで、余すところなく語っていただきました。



――まずは、Iさんが日本工業大学に進学された経緯を教えていただけますか。


Iさん 実は他にもう一つ合格していた大学があったのですが、自宅から通えない場所で悩んでいたんです。そんな時、日工大の合格者限定のオープンキャンパスに参加したところ、教職員の方や先輩方の雰囲気や、キャンパスの充実度が非常に良くて、総合的にこちらに進学を決めました。電気系を選んだのは、高校2年の時に別の大学のオープンキャンパスでの体験があったからです。最初は機械系志望だったのですが、少し時間があったので、試しに電気系の体験授業を受けてみたら、それが非常に面白くて。その日を境に電気電子通信分野を志望するようになりました。



――今回、お聞きしたいのは、学生広報スタッフでの活動についてのことです。Iさんが参加されたのは、どのような経緯だったのでしょうか。


Iさん 当時の名前は「オープンキャンパス学生運営チーム」っていう名前だったんですけど、私が大学3年生になった4月下旬頃、大学のポータルサイトで「一緒に活動するチームのメンバーを募集します」という案内を見たのがきっかけです。 元々自分も高校生の時にいろんな大学のオープンキャンパスに参加して、いろんな先輩方にお話を聞いたり体験をさせてもらったりしたので、そういった活動をやってみたいと思って。それですぐ応募したんです。それに大学に2年もいると日工大でしかできない経験もたくさんできて、大学の良いところが見えてきて、それを多くの高校生に知ってほしかったというのも理由の一つです。



――具体的にはどんな良いところが見えてきたのですか?


Iさん 日工大は「実工学教育」を掲げていて、座学だけで終わらせず、学んだことを実験で実証していく授業が多いんです。これは他学科も同じで、実験実習が非常に充実しています。 施設面でも、キャンパスは東京ドーム約6個分あって広くて、日々の勉強だったり、サークル活動だったり、英語学習や就職などを親身にサポートしてくれる施設もたくさんあります。工学を学ぶうえでのカリキュラム自体はどこの大学も大差ないのかもしれませんが、キャンパスの環境に関しては、うちの大学には魅力があると思うんですよ。決して偏差値や知名度がすごく高いわけではないけれど、自分が2年間で実感した「日工大の素晴らしい環境」を、オープンキャンパスに来てくれた高校生に知ってもらい、志望してほしいと思うようになって。やってみたい、という思いが強くなって応募しました。



――実際にチームに入ってみて、最初はどのような雰囲気でしたか?


Iさん 実は私は土曜日に授業が入っていて初回の研修会に参加できず、チームの皆さんと初めて顔を合わせたのが6月のオープンキャンパス当日だったんです。自分も周りも初めての仕事なので、当日はバタバタしていて「何をすればいいんだろう」という手探りの状態からのスタートでした。



――どんなメンバーが集まっていたのですか?


Iさん メンバーは20名ほどで、リーダーのKさんをはじめ、いろんな学年や学科の人が集まっていました。私が当時所属していた硬式テニス部はコロナ禍の影響で人数が少なかったのですが、このチームは縦にも横にも層が厚く、いろんな人たちと関われる機会にとてもワクワクしたのを覚えています。しかも、全員が「経験0年目」だったので、年齢を感じさせない本当にフラットな状態でした。



――どんなところに楽しさややりがいを感じていましたか?


Iさん 自分が過ごしてきた大学の良さを伝え、それが高校生に分かってもらえる実感があったことです。アンケートでもそういう声をいただいたので、「高校生のためになっているな」と思えて、組織の中での自分の存在意義も感じることができました。別の視点でいえば、全く違う分野を学んでいる他学科のメンバーの話を聞けるのも非常に楽しかったですね。



――その後、活動は秋以降も続いていったのですね。


Iさん そうです。8月までの期間限定の活動だと思っていたのですが、9月ふりかえりの会があって、「解散ではなく、来年3月に『入学前準備説明会』をやります」と言われて。まだ続くんだなと思い、嬉しかったです。



――入学前準備説明会とはどのようなイベントで、それに向けてどんな活動をされたんですか?


Iさん 1教室約50名の入学予定者に対して、私たちがファシリテーターとなってグループワークを行い、不安解消と、大学生活を前向きに描けるように、友達作りの場を提供することを目的としたイベントです。オープンキャンパスとは全く異なり、ファシリテーターを経験したことがある人もいなかったので、10月から月に1回、ラーニングバリューさんが講師となってファシリテーションのトレーニングを行いました。目標に向けて研修で学びながらみんなで走っていくという感じでした。



――研修を通じて、ご自身の中でどんな変化や学びがありましたか?


Iさん 人見知りを克服し、コミュニケーション能力やファシリテーション能力が身についたことです。大学1・2年の頃は、初対面の人と2人きりになると、相手から話しかけられるのを待ってしまうタイプでした。研修での学びと実践を通じて、複数人が集まった時のファシリテートというか、自分が主体となって場を進めていく力が大きく伸びたと感じています。



――「オープンキャンパス学生運営チーム」は2年目を迎えて、Iさんも4月に大学4年生になったくらいのタイミングで、チームを組織化する話が出たと思います。その時はどう受け止めましたか?


Iさん 途中から加わったメンバーも含めると、春の時点で30〜35人規模になっていました。Kさん1人では全体の統率をとるのが難しくなってきていたので、組織化は当然の流れだと納得しました。大学生は4年で卒業してしまうし、毎年新しいメンバーを募って循環させていくためにも組織化は必須だったと思います。



――その中で、Iさんはどのような役割を担うことになったのでしょうか。


Iさん 最初はKくんがリーダーの仕事をしていたので、私は単なるメンバーの一員でした。ですが、5月頃、当時の入試部長にKくんと一緒に呼ばれて、「Kさんと一緒に動いて補佐的な役割をしてもらったほうがスムーズになるのではないか」といわれて。私は中・高・大と人のリーダー経験をしたことがあって、この組織でもやってみたい気持ちがあったのですが、Kさんという絶対的なリーダーがいたので難しいかなと思っていたんです。だから、そういう役割をいただいた時は嬉しかったですし、やりたいと思いました。



――Kさんと二人三脚で組織を動かし始めて、どんな課題に直面しましたか?


Iさん 大きく2つの課題がありました。1つ目は、6月に新しく加わった1年生約20名への教育です。当初は先輩が付きっきりで教える予定でしたが、私たちも経験が浅く、当日の自分の仕事もあるため難しかったですね。これに対しては、1年生に「教えてもらえることに期待しないで。自分たちでできそうなことは恐れずに積極的に動いちゃってOKだよ」と率直に説明しました。これについては、回数を重ねるうちに1年生も主体的に動いてくれるようになり、収束しました。



――もう一つの課題は何だったのでしょうか?


Iさん ちょうど6月頃に計画していた「座談会」という企画の中で、メンバー間の人間関係のいざこざが起きてしまったことです。これには本当に頭を悩ませました。私が直接間に入っても解決する気がしなかったので、ラーニングバリューのAさんにも協力していただき、当事者や他の人の話をとにかく聞きました。少しでも双方が納得できる形に終わらせようと奔走したのですが、結局最後は一人がチームから抜けてしまうことになって…自分の力不足で申し訳なかったという思いが今でも残っています。



――学生広報スタッフのファシリテーション研修を行ったり、組織の悩み相談にのったりしていたラーニングバリューのAさんからは、「Kさんが『組織を立ち上げた人』で、Iさんが『組織の土台を作った人』と聞いています。ご自身ではどう感じますか?


Iさん それが非常に面白いところで、私とKさんは性格が全然違うタイプなんです。Kさんは大雑把にスパーンと物事を進めるタイプで、カッコいいリーダーとして一番前に立つのが似合う人ですが、私は几帳面で慎重な面があります。Kさんが大きな道しるべを示して前に進んでいくとすると、その後ろにできた道はまだデコボコしているので、私が丁寧に整えるというようなことをやっていました。



――具体的なエピソードはありますか?


Iさん 例えば、オープンキャンパスでKさんが学生代表の挨拶をする時、「こういうことを話すぞ」という大枠や文言は彼が考えるんですが、その後ろで投影するスライドを細かくつくりこんでいくのは私が担当していたり。また、Kさんは全体を見る分、後輩とのコミュニケーションが少なくなりがちだったので、俯瞰して見ていた私が積極的に後輩たちに声をかけ、仕事を教えながら後継者を育てるつもりで接していました。そういった動きを見て「土台をつくった」と評価してくださったのだと思います。



――リーダーの大きな方向性を示す言葉を、現場に即して翻訳するような役割の人がいるのは組織にとってとても重要なことだと思いますよ。正反対のお二人ですが、ぶつかることはなかったのですか?


Iさん これが本当に一度もぶつからなかったんですよ。私も人の上に立つ役割の経験は多いので苦手意識はないのですが、いつも「2番手(ナンバーツー)」のポジションの方が自分の性に合っていると感じていたので。彼とはお互いの役割分担がうまく噛み合っていて、本当に良いパートナーだったと思います。



――Iさんとの対話を振り返ってみると、リーダー論に通じるようなこともおっしゃっていた気がします。そういう経験を通して、Iさんは組織がうまく機能するために大切だと感じたことは何ですか?


Iさん モチベーションの維持ですかね。これに関しては、私が高校時代の部活動経験からもずっと難しいテーマだと思っているのですが・・・学生広報スタッフでは2年目のLVさんの研修会で、組織の理念をつくったんです。それによって、みんなが向くべき方向が「理念」という形になって見えるようになりました。それを掲げるようになってから、組織のモチベーションが下がらなくなったのは大きかったと思います。それから、何よりも大事なのは、コミュニケーションですね。自分がどう思っているかを周囲に話すことで、周りの人も理解してくれて、相互理解が生まれるのだろうと思います。



――昨年の秋に後輩へリーダーを引き継がれましたが、託した思いや伝えたいことはありますか?


Iさん 大きく分けて2つあります。 1つ目は、「すべては高校生のために動く」という根本の目的を絶対に忘れないこと。自分たちがやりたい企画に走るのではなく、それが本当に高校生のためになっているのかを常に問いかけながら取り組んでほしいです。日工大の素晴らしい教育や施設を伝えていく役割をしっかり果たしてほしいですね。

2つ目は、主体性を成長させてほしいということ。以前の私なら「主体性なんて目に見えないし、何だよ」と思っていました。でも、約3年間の活動を経て、胸を張って「主体性が育った」と言えるようになりました。後輩たちには、ここで培った主体性を大学のグループワークや就職活動の場でも存分に発揮して、周りと差をつけていってほしいと強く願っています。



――誰かと協力して何かを成し遂げることの面白さや苦労は、授業だけでは得られない大きな財産ですね。


Iさん そうですね。チームで動けば失敗したり上手くいかなくて苦しい時間もありますが、それは決して無駄ではなく、私は成功するための道筋だと捉えています。成果が出て誰かに評価してもらえた時の喜びは何物にも代えがたいものですね。


※肩書・掲載内容は取材当時(2026年2月)のものです。

リーダーKさんと補佐役のIさん。2人のインタビューを終え、組織が成長していく際のチームビルディングの意味について考えてみることにします。

組織が立ち上がる時、最初はある人の想いから始まったものが、その想いに共鳴した人たちを集め、力強く動き出します。そこからさらに輪が広がり新たな人が加わると、様々な動機の人々が集まってくることになります。様々な動機(例えば高校生の役に立ちたい、とか、就職に有利になるように、とか、友達に誘われて、などなど)は、通常互いに知り合うことはありません。今回の事例で言うと、オープンキャンパスをいいものにする、と言う組織の目標があるわけで、それを共有していると思っているわけです。でも動機の根っこには全然レベル感の違うものが存在していて、その違いは必ず実際の行動に表れて来ます。それが表現として「やる気がある、ない」とか「主体的だ、でない」とかになっているのかもしれないと思うのです。こうして組織の崩壊の危機が現れます。

ではこの状態が現れた時、或いは現れそうになった時、皆さんはどうアプローチしているでしょうか。例えば「〇〇の際は◇◇のように対応してください」などのルールを決め、行動からアプローチすることが多いのではないでしょうか。

北森先生はチームビルディングの3つの要素の1つとして「目標統合」を挙げておられます。これはよく言われる目標共有とは全然違います。その意味は、互いの動機を知り合い、認め合い、その上で組織としての目標が作られていき、個人の動機と組織の目標が個々人の中で繋がる状態になることなのです。そうなって初めて組織メンバーがそれぞれの動機を満たしながら組織の目標達成に邁進する強いチームが作られていく、と思うのですがいかがでしょうか。

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