連載4-1/模索する、イメージするリーダー像。組織づくりの試行錯誤と挑戦【常磐大学】
常磐大学で学生の主体性を涵養するために2014年から始まったTSS(Tokiwa Student Staff)の活動は、立ち上げから10年を経た2023年に、より学生主体の自治活動へとシフトするため「コミュニティサービス連合」へと進化を遂げました。本連載では、組織の成長や発展、あるいは危機について、活動の中核を担うリーダーや、伴走する職員に話を聞いてきました。最終話ではイベント企画団体「ENISHI -縁-(えにし)」(以下、縁)でリーダーを務めたKさん(人間科学部コミュニケーション学科4年生)に登場していただきます。イベント企画未経験の1年生だけで手探りで挑んだ初企画から、「団体としての軸をつくる」フェーズへの移行、それに伴うリーダーとしての葛藤や成長について話を聞いてみました。
(全2回の前半)

―― まずは、Kさんについて知りたいのですが、常磐大学を選んだ理由を教えていただけますか?
Kさん ラジオやバラエティ番組が好きで、番組制作の裏方などメディア系職業に興味を持つようになったんです。将来的にはテレビやラジオに携わる仕事をしたくて、マスコミやメディアにつながる分野を学べるコミュニケーション学科を選びました。
―― ありがとうございます。では、Kさんがコミュニティサービス連合に入ったきっかけは何ですか?
Kさん イベントの企画に携わってみたいと思い、入学してすぐにときわ祭(文化祭)の実行委員に入りました。その時に、「実行委員」と「ENISHI -縁-(えにし)」の両方に入っている方から、「コミュニティサービス連合の中に『ENISHI -縁-(えにし)』というイベントを企画する団体もあるよ」と教えてもらって、5月ごろから2つ掛け持ちで活動していくことにしたんです。
―― 当時のENISHI -縁-(えにし)はどんな活動をしていたのですか?
Kさん 僕が入ったのは、ちょうどTSSがコミュニティサービス連合に変わったタイミングで、ENISHI -縁-(えにし)はほとんど新設に近い団体でした。その時に主催していた学生向けイベントは、サークルと新入生をつなぐ「GOEN(ゴエン)フレッシュフェス!」の1つだけ。しかも、元々、先輩が5人くらいしかいなくて、そこに僕たちの代のメンバーが一気に10人くらい加わったので、勢いもついて「何でもできる」という雰囲気でスタートしました。
―― ENISHI -縁-(えにし)のSNSによれば、フレッシュフェスは2026年に第7回目を迎えたそうで、ENISHI -縁-(えにし)でやっている一番歴史があり、かつ大きいイベントになるのでしょうか。
Kさん そうですね。入退場自由で、いろいろなサークルの活動紹介を聞いたり体験したりできるイベントです。4月に3日間で累計約370人に来ていただいています。
―― フレッシュフェス以外のイベントはどのように仕掛けていったのですか?
Kさん 1年生だし、そもそもイベントの企画自体がどういうものか分かっていない状況でしたが、「新しいイベントを考えよう!」というのが僕たちの代の一発目でした。最初にやったのは、運動系イベントの開催です。ときわ祭という文化祭的イベントはあるけれど、体育祭のようなものはなかったので、「体育館を借りて運動会みたいなものをしてみよう」ということになりました。
―― 初企画の運動系のイベントは、やってみてどうでしたか?
Kさん 何も分からない新メンバーが中心となって企画を進めていったので、手探りの部分がすごく大きかったんです。進めながら、「イベントってこうやって出来上がっていくんだな」とわかってきた感じで、楽しかった記憶もありますが、今になって振り返れば、粗も多かったと思います。それでも来てくれた人は楽しんでくれましたし、僕はイベントを行うことよりも、つくっていく過程がすごく好きだと実感しました。「こんなふうにイベントを企画する活動ってやっぱり面白いな、もうちょっといろんなことをやっていきたいな」と思いました。
―― なるほど。でも、いきなり未経験が10人集まって「ああしよう、こうしよう」がたくさん出てきて混乱はしませんでしたか?「全部はできない」とか、「それは違う」といった意見の相違にはどう対処しましたか?
Kさん その時は、出たアイデアを実現させるのに必死でした。しっかりした経験者やリーダーがいれば分別をつけてくれたかもしれませんが、初めてイベント企画をするメンバーばかりで、できるかできないかという判別が自分たちでもつかない状況だったので。とりあえず「どうやったらできるか」と考え、出た案をなるべく取り入れるようにしました。入れすぎてごちゃごちゃになっていた部分もあったかもしれませんが、みんなの意見を踏襲してやっていこうという思いが1年目は強かったです。
―― 取捨選択しないから衝突もしなかったし、「出た意見は全部やっちゃえ」と一致団結していたということですね。
Kさん そうですね。ただ、1回きりなら何をやってもいいかもしれませんが、継続してやるつもりなら、イベントとして認知されるための軸が必要です。団体を大きくするためには「毎年、あの場所でやっているあのイベントね」と認知されていかなければ。最初はその辺まで頭が回っていなかったので、経験を重ねるにつれて、先も見据えた企画づくりが必要なんだなというのも見えてきました。
2年目からは僕がサブリーダー、途中からはリーダーを務めるようになり、団体として「こういう意見もあるけど、それを活かそうとするとこのやり方には当てはまらない」など、リーダーとして判断することもありました。
―― この3年間でどれくらいのイベントを仕掛けてきたのですか?
Kさん 1年生の時は3回、2年生で4回、3年生の時は5回に増えたので、計12回くらいです。基本的には一度開催したものは翌年も継続して開催しているので、年々イベント数は増えています。
―― フレッシュフェスと運動会以外にはどんなイベントを実施したのですか?
Kさん 3年生になった時に、イベントの対象者を学内だけでなく学外にも広げたいという意見が出ました。そこで「C-lab(シーラボ)」という学生と社会人をつなげるイベントを企画しました。副顧問の関さんのつながりで様々なキャリアを持った社会人の方を集めてもらい、バーベキューなどを通して交流しながら、自らの生き方やキャリアについて考えるイベントです。
他には、「ARTE(アルテ)」という言葉をテーマにした展示会イベントも行いました。いろんな人の「自分の影響を受けた言葉」とその理由を集めてきて展示したり、文芸系のサークルの学生を募って3人ほどでリレー小説を執筆してもらい、それを展示したり。直接的に人が触れ合うものじゃなくて、間接的なつながりをつくろうっていう観点での企画したものです。
―― いろんなアイデアを実践しているんですね。フレッシュフェスは毎年徐々に認知度が増えているとのことですが、他のイベントはいかがですか?
Kさん 一番回数を重ねている運動系イベント「GOENスポーツフェス」も、まだ学内の認知度が高くなく、身近な団体の人に声をかけて人を集めている状況です。回数を重ねても人数が増えないので、コロコロ変えるのではなく固定のプログラムをつくって、参加者に「あの時期のイベントに向けて練習しよう」というマインドや空気をつくっていけるかなど、試行錯誤しています。他の2つのイベントはまだ第1回を終えたところなので、これからどうしていくかという段階です。
―― 毎回やったことを振り返って分析し、翌年に反映しようとしているんですね。ちなみに最初に入った1年生10人はそのまま今も「ENISHI -縁-(えにし)」に所属していますか?
Kさん 手探りで企画していく難しさや忙しさ、上手くいかないことが原因で辞めてしまう人もいて、今残っているのは半分くらいです。
―― Kさんは「ENISHI -縁-(えにし)」に残ってリーダーを務めたわけですが、このチームを活性化したり発展させたりするために、心を砕いて取り組んだことはありますか?
Kさん サークル活動はお金をもらってやるわけではないので、どれだけ楽しめるかが重要で、楽しめないと続かないと思っています。僕自身はミーティングで話し合いながら物事を詰めていく作業が好きで楽しめているのですが、そうではない人もいます。イベント当日が楽しくて好きな人もいれば、学ぶ場として活用している人もいるので、みんなが楽しめるようにというのは意識しましたね。
それに、もともと僕はコミュニケーションが得意でみんなを引っ張っていくタイプではないんです。だから、少し自分を騙して、積極的に後輩に呼びかけてみたり、同級生にはっぱをかけてみたりするようなことは、リーダーとしてすごく意識してやっていました。
―― そういうリーダー像は誰かから学んだのですか?それとも直感的にやっていたのですか?
Kさん 僕が1年生で縁に入った時のリーダーを参考にしました。その人は段取りよくきっちりやるタイプではなかったのですが、イベントをやる時に誰よりも楽しんでいて、それがみんなにも伝わって、「この人とやっていると楽しい」と思わせるキャラクターを持っていたんです。僕はその人ほど楽しませることは得意ではなかったのですが、「こういうことやってたな」とイメージしながら、そのリーダーの姿に倣ってやっていたところはあります。
―― リーダーとして、これまで「組織の危機だ」と思うようなことはありましたか?
Kさん 2年目に僕たちの下に後輩が入ってきた時、大人しめな子が多くて、リーダーの僕も盛り上げられるタイプではなかったので、どうやってこのサークルを盛り上げていくかという点で苦労しました。コミュニティサービス連合は副顧問の関さんが学生を見てくれている分、他のサークルよりも組織や活動の進め方がしっかりしています。一方で、大学生なら勢いでできるようなことであっても、社会人になぞらえて活動している面があることで辛くなってしまうこともあるんです。だからこそ、楽しいものにできるように、ミーティング以外で話しができる時間を設けたり、イベント当日も盛り上げられる人がいなければリーダーの自分がやるしかないと別人を演じて司会進行をしたりと、サークルを盛り上げることには気を配りました。
―― 現在の状況はいかがですか?
Kさん 今は4年生なので、僕はリーダーを退いているのですが、後輩はメンバー数の減少に悩んでいます。企画に深く携われる2・3年生が極端に少なくなってしまって、イベントを成立させるためにどうやって新メンバーを増やすか、他団体の人から人手を借りるかなど悩みながらやっています。
―― 新入部員が増えない原因は何だと思っていますか?
Kさん 副顧問の関さんとも話すのですが、今どきの大学生全体が「みんなで楽しむ」という意識が薄れてきている影響もあるのではないでしょうか。学内イベントを開催しても集まる人数が少ないので、最近は、大々的に広報して集めるのではなく、メンバーそれぞれが友人を連れてきて徐々に広げていくなど別のアプローチも必要だと話しています。今の学生は友人が参加していれば参加しますが、個人単独で参加する人は少ないので。他のサークルと協力してイベントを企画し、お互いに認知してもらってメンバーを増やすということも今後の案として出ています。
※肩書・掲載内容は取材当時(2026年4月)のものです。
