連載1-3/組織の土台をつくるのは「自己理解」。チームビルディングが持続可能な組織をつくる【常磐大学】
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常磐大学では学生の主体的な活動を促すために2014年に、「TSS(Tokiwa Student Staff/現:コミュニティサービス連合」を立ち上げておられます。そして、立ち上げ当初から現在に至るまで、メンバーの関係性構築をねらいとして、ラーニングバリューのチームビルディングプログラム「自己の探求」を継続的に活用されています。チームビルディングを基盤とした組織の熟成と、未来へ向けた展望について、活動に伴走する職員、関 敦央さん(心理臨床センター統括)にインタビュー。柔軟な発想で組織の枠組みを変え、「組織は生き物」とおっしゃる関さんに、持続可能な活動にするために考えておられることをお聞かせいただきました。
(全3回の最終回)

――常磐大学さんとラーニングバリューのお付き合いは長くて、2010年頃からチームビルディングプログラム「自己の探求」をご活用いただいています。TSS~コミュニティサービス連合でも2014年以降、この研修を毎年春に「リーダー養成研修」として導入していただいていますよね。
関さん はい、今年も今年度の活動メンバーが決まった5月末~6月上旬にかけて、ラーニングバリューさんに研修を行っていただく予定です。これによって新入生同士あるいは先輩・後輩のタテとヨコのつながりができて、活動へのモチベーションが高まることを期待しています。
――研修の印象についてお聞かせいただいてもいいでしょうか。
関さん すごくいい研修だなと思っていますよ。毎年、研修のスタート時点と終了時点では、「学生の顔ってこんなに変わるの?」と思うほどの変化があって、こちらが驚かされます。特に新入生にとっては、入学直後の不安な時期に体験することで話し相手ができ、結果として退学防止にもつながるのではないかと思っています。本当は、全新入生に体験してほしいくらいです。
――常に新しいことにチャレンジしておられるので、「もっと違う研修も試してみたい」という思いも芽生えそうに思いますが、TSS~コミュニティサービス連合と組織体系が変わっても、関さんが長きにわたって同じ研修を使い続けておられるのはなぜでしょうか?
関さん この研修は、学生同士の関係づくりや自己理解、他者理解といった、活動を進める上での基礎づくりに最適なんです。まずは学生たちにその部分をしっかり身につけてもらい、その先の実践的な取り組みや、心に火をつけるような部分については、私たちの側でさまざまな工夫をしています。
餅は餅屋といいますが、こうした領域は専門性のあるファシリテーターの方に任せたほうがよく、中途半端なまがい物では学生のためになりません。私自身、10数年にわたって見学してきたので、仮に真似事のようなことはできたとしても、同じレベルで提供するのは難しいだろうと感じています。
だからこそ、この研修は私たちの活動にとって、ずっと大切にしているものなんです。
――しかも、新入生の時だけでなく、2年目、3年目と繰り返し、先輩後輩が一緒になって研修を体験してくださっているんですよね?
関さん 先輩たちも1年も経つと、細かい部分は意外と忘れてしまうものなんですよね。自己理解を深めるという観点でいえば、昨年から変わったことや、立場や役割の変化によって生まれた気づきにもつながります。同じ研修であっても、1年生と3年生では受け止め方がまったく違いますし、受講者側の変化によって感じ方も変わっていくと思っています。
ラーニングバリューさんを持ち上げたいわけではありませんが、そうした意味でも、この研修を変える必要は感じていません。
――私もこのプログラムを開発した北森義明先生の背中を見ながらチームビルディングについて学んできましたが、最初のうちは、チームビルディングのプロセスに「自己理解」が含まれているのがなかなか理解できなかったんです。相互理解ならわかるんですが、なぜ自己理解は必要なのか、と。それが、「ああそうか、人が自己理解するプロセスってチームを強くするんだな」とわかって、腹落ちしました。この感じが、チームビルディングの主体となる関さんや学生さんにはちゃんと伝わっている気がします。
ところで関さんが学生さんと関わるうえで、課題を感じていることはありますか?
関さん 実質的に今、この組織の活動に関わっているのは私だけなので、私がいなくなった後のことを考えています。学生たちも私に依存しているわけではありませんが、不安を口にすることはあります。本来は、学生だけで進んでいけるような組織体になっていくのが理想です。しかし、学生は4年で卒業してしまうため、どれだけ強固な基盤を積み上げても、代替わりのタイミングで変化が生じることがあります。組織力として上下を繰り返しながら、ある程度の底上げはされているとはいえ、継続していくことは簡単ではありませんので。
――学生をバックアップするには、組織を継続的に見守り、伴走できる教職員の存在が必要ではないか、ということですね。
関さん 活動への意識も含め、難しさはありますが、私のような役割を担ってくれる教職員を見つけるなど、何らかの手を打たなければならないと考えています。また、やや夢物語ではありますが、NPOなどの法人組織をつくり、TSSの卒業生や学外の社会人の方々にも参加してもらい、学生をサポートする仕組みがあればいいなとも思っています。実際、卒業生からも「そういう活動ができるなら参加したい」という声が多く上がっているんですよ。
――確かに、ここで活動した学生がOB・OGの立場で、卒業後も学生をサポートしていく役割ができれば素晴らしいですね。
関さん そうなんです。そのために、飲み会でも何でも、来る・来ないは別としてOB・OG全員に声をかけています。全員とは言いませんが、都合が合えば来てくれますし、30歳を超えた1期生と今の学生もつながりを持ち続けています。世代を超えたタテの関係は今も継続していますね。
――コミュニティ連合の活動が、学生にとっては「社会人3年目ぐらいまでに通用するスキルを学ぶ機会」になっていますよね。それだけでなく、研修や活動を通してチームビルディングを学び、体験することが、彼らが社会人になって職場でマネジメントをする立場になった時に生きてくるのではないでしょうか。また、卒業してからも後輩と接点を持ち続けることで、組織や集団に熱を入れる役割を担い、活動をサポートしてくれるような関係をつくることもできるかもしれませんね。
関さん それは面白いアイデアですね。学生時代に培ったものも、社会人になるとどうしても薄れていくものです。だからこそ、「社会人になって学生と一緒に学び直す」という発想はとても興味深いと思います。私は常に新しいことに挑戦したいタイプなので、そのアイデアはこの場だけで終わらせず、現実にできたらいいなと思います。
――私が担当している大学では、先生方にチームビルディングを学んでもらっているケースがあります。その大学では異なる学科の先生が2人ペアになって40人ぐらいのクラスを担当する仕組みにしています。学生も異なる学科同士でグループをつくってもらって、グループワークをするんですが、卒業後も「あの授業が一番面白かった」と覚えてくれているくらい人気の授業になっています。
8年間ほど継続していますが、かなり浸透していて、先生方がチームビルディングの原理を使って上手く学生の主体性を引き出すような仕掛けを考えてくださるようになっていて、すごいパワーが生まれています。
関さん 学生だけでなく、教職員のチームビルディングという視点もいいですね。本学もぜひ見習いたいくらいです。
――コミュニティ連合の今後の展望についてお聞かせください。
関さん 今年度、遅くとも来年度からは、コミュニティサービス連合に所属するメンバーが、より個性に合わせた活動ができるような仕組みを検討しています。
通常、各団体はそれぞれの内部でさまざまな企画を立てて活動しています。ですが、団体の所属メンバーではないものの「この企画だけは参加したい」という学生もいます。
そこで、企画によっては団体の枠を超えて参加できるように、変えていきたいと考えています。
――団体の枠を超えて個々が好きな企画を選択でき、学生は柔軟かつ幅広く活動できるようになるんですね。
関さん もちろんデメリットもあるとは思いますが、今後、団体所属のメンバーが少なくなってくると、企画そのものを運営できなくなる可能性も出てきます。そこで、企画単位で他の団体からサポートに入れるようにすることで、組織としての安定感も増すのではないかと考え、その仕組みを構想しているところです。
――組織の縦と横の関係をうまく動かそうとしておられるんですね。
関さん 学生にはよく、「組織は生き物だから、どんな形にもできるんだよ」と伝えています。ただし、状況や環境に合わせた組織をつくる必要があります。昨年までこういう仕組みだったから今年も同じ、というのではなく、「今」のメンバーの状況に応じてより良い活動ができるように、どんどん組み替えていいんです。
「今年1年だけの組織」でも、「何年か継続する組織」でも、どちらでも構わないということは、常に伝えています。
――「組織は生き物」、その考え方はすごく面白いです。
関さん 学生がやりやすい環境を自分たちで考えて整えるのがベストだと思っているので、常に自分たちで考えてほしいんです。組織を変えたいのであれば、いくらでもアドバイスはしますし、変える際のメリット・デメリットを一緒に考えるアドバイザー的な役割は務めたいと思っています。
――TSS~コミュニティサービス連合の活動は立ち上げから10年近く続いていますが、大学への影響や、学生さんの変化で感じることはありますか?
関さん 団体内においては、確実に変化が見られますね。4年間活動する中で学生は成長していきますし、時間をかければかけるほど成長するものだと実感しています。ただ、それが大学全体の学生を動かすほどの影響力があるかといえば、そこまでは言い切れません。10数年活動を続けてきたことで知名度は上がっていますが、一般的なサークルとは少し違うイメージで見られている面もあります。
それでも、「フレッシュフェス」(新入生勧誘のサークル紹介イベント)のように、他のサークルと連携しながら取り組んでいる活動もあります。以前はコミュニティサービス連合内の団体だけで行っていたビラ配りも、今では各サークルも積極的に協力してくれるようになりました。
そういう意味では、団体同士のつながりは以前より確実に強くなっていて、今後、団体間コラボのような取り組みも生まれてくるのではないかと期待しています。
※肩書・掲載内容は取材当時(2026年4月)のものです。

関さんとの対話はとても刺激的でした。関さんの学生組織の作り方や、その発展のためのノウハウは、大いに皆さんの参考になるのではないでしょうか。
特に印象的だったのは「パッケージ化」のお話。パッケージ化と聞くと、マニュアルのようなものを連想してしまいがちだと思いますが、関さんのおっしゃる意味は大きく違っているように感じました。
「何を・いつまでに・誰がやるのかを明確にしておけば、誰でも対応できる」という自分の社会人経験を、そのままTSSに移植しているような感覚ですね。
人事異動の際に、そのためだけのマニュアルを書くようなことはしたくないんです。基本的には「これとこれを見て、わからないことがあれば聞いて」というスタイルにしています。
先輩がつくったものをそのままコピペして提出してくることがあるので、「これはどういう意図で書いたの?」と必ず質問するようにしています。「わからないです」と答えれば、「自分でつくったのに、なぜ説明できないの?」と問い返す。その繰り返しです。
過去の資料は大いに活用すべきですが、少なくとも自分の中で理解し、自分の言葉にしてから発信しなさい、という指導は徹底しています。これは学生に限らず社会人も同じで、質問をしたときに「前はこうやっていたから」という回答が一番よくないと思っています。
すなわち、考える材料をパッケージにしているけれども、それに従いながら「何を」「どのような意図で」「そうするのか」を常に問いかけている、ということなのかなぁ、と感じました。組織が維持拡大していく際に、このような関わり方が、人と組織を成長させるように感じる場面でした。皆さんはどうされていらっしゃいますか。様々な関わり方があると思いますが、皆さんの成功体験や失敗体験をぜひお聞かせください。



