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学校の組織開発物語

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連載2/学生組織の「熱量」をどう束ねる?現場担当者が直面する組織のジレンマ【日本工業大学】

  • 1 日前
  • 読了時間: 12分

近年、「学生を成長させる力で選ばれる大学へ」のキャッチフレーズを掲げて教育の実践に取り組んでおられる日本工業大学。ラーニングバリューでは、これまでに同大学で学生の課外活動や資格取得講座、初年次教育におけるチームビルディングのお手伝いをさせていただいたことがあり、当サイトで「基幹工学部における、チームビルディングを取り入れた教育プログラム開発の取り組み」について取り上げさせていただいたこともあります(連載期間:2020年9月~2021年2月/https://www.l-value.biz/post/nit1-1)。


日本工業大学では「学生広報スタッフ」を組織して、学生主体で「高校生ファースト」のオープンキャンパス運営に取り組んでおられます。前回は、同組織のサポート役を務めておられる入試部入試課の課長補佐 小泉拓也さんの視点から、2023年に始まった取り組みの背景や組織化の全体像と仕組みづくり、そして組織運営の課題について語っていただきました。

今回は、より学生に近い「現場の最前線」に視点を移して、学生の身近なサポート役である入試課の佐藤ほなみさんに話を伺いました。急拡大する組織の中で、学生たちの溢れ出るアイデアや、メンバー間の温度差といった「成長痛」に日々向き合っておられます。組織として機能させるための試行錯誤や「学生主体」の難しさについての率直な思いもお伺いしました。




―― 最初に佐藤さんのこれまでのキャリアと、日本工業大学との関わりについて教えていただけますか。社会人キャリアにおいてここが初めての職場ですか?


佐藤さん  社会人としては2つ目の職場になります。企業で営業職として2年ほど働き、その後、日本工業大学に入職しました。実は、私の父が本学の卒業生なので、大学にはずっと親しみを感じていました。入職後は就職支援課で5年ほど働いて、1年間の外部機関への出向を経て、入試課に配属されて2年になります。



―― 深いご縁があるんですね。入職の前と後では大学へのイメージは変わりましたか?


佐藤さん  私は文系出身で、学生時代を賑やかに過ごしたタイプだったので、工学系の学生には「真面目で堅い」イメージを持っていました。実際に働いてみても、その「真面目さ」は日工大生の良さだと感じています。

ただ、担当部署によって見える学生の顔が少し違う気はします。就職支援課にいた頃に接していた学生は、悩み相談に来る子が多く、「アドバイスを素直に受け入れて行動する、真面目なタイプ」という印象がありました。一方で、今関わっている学生広報スタッフの子たちは、少しタイプが違います。部活動や委員会など複数の団体に所属し、とにかく行動的で活発です。さらに、素直で真面目であることに加えて、自分の意見をしっかり発言できるタイプでもあります。「あれもやりたい、これもやりたい」と、学業だけでも忙しいはずなのに、さらに大学のため、高校生のために時間を使おうとする。「なんて優しい子たちなんだろう」と感心します。



―― 話を聞く限り、行動的なタイプが集まっているのが「学生広報スタッフ」のようですが、佐藤さんが担当になった時点ではどのような状況だったのでしょうか?


佐藤さん  私が担当になったのは、組織が動き出して2年目のタイミングでした。入試課の前任者に聞いた話では、それ以前のオープンキャンパスは、学生は単なる受付などのアルバイト要員で、教員が主体で運営していたそうです。そこから「本学の学生の良さや成長を知っていただく機会にしよう、高校生に年齢が近い学生が対応することで、高校生の目線に寄り添った“高校生ファースト”の運営にしよう」という方向にシフトして、2023年から学生主体の活動ということで動き出しています。私はそのバトンを受け継ぐ形で、2024年から担当しています。



―― 立ち上げ期の熱量を引き継いだ2年目は、どのような雰囲気でしたか?


佐藤さん  元々1年目は、立ち上げメンバーが声をかけて集めた約20人の組織で回していたんです。設立時は声をかけて勧誘していて、紹介制でメンバーを集めたこともあり成績も優秀で意識の高い学生が集まっていた印象でした。2年目からは、メンバーを増やすために学内ポータルサイトで広く公募をかけ、学生たちが面談をして一緒に活動したいメンバーを自分たちで選んで決める形に変えたんです。



―― 紹介制から公募制に変えたことで、組織にはどのような変化が起きましたか?


佐藤さん  温度差が出るようになりました。立ち上げメンバーは「大学のスペシャリストとして来場者のご要望に何でも応えられる学生スタッフでありたい」という高い意識を持っていましたが、人数が増えるにつれて、そのマインドを全員に共有するのが難しくなってきた面はありました。また、組織化したことで、「自分たちがやりたいことではなくなった」と活動に消極的になった学生が抜けたりするようになったんです。現在は名簿上に約70名が存在していますが、実働メンバーは40名ほどの組織になっています。



――そもそも「組織化」のねらいは?


佐藤さん  特定のリーダーや人脈に頼らず、次の世代へしっかり引き継げる体制にしたいという思いがまずありました。それから、役割を持つことで主要メンバーが組織に残りやすくなる、という狙いもありました。代表・副代表や係のリーダーといった役職をつくることで、学生たちが組織の中でどう行動するかを考えたり、学んだりするきっかけにもなるのではないかと期待していました。そうした経験を通して、コミュニケーション力やリーダーシップ、協調性、ファシリテーション能力など、社会に出てから役立つ力を自然と身につけてもらえたらいいなと考えていました。



―― 1人1人に役割を与え、リーダーが1人でやっていることを分散させることをねらっての組織化なんですね。学生の主体性を尊重する仕組みを作ろうとされている中で、佐藤さんご自身はどのような役割を担っているのですか?


佐藤さん  私は主に代表や副代表と連携を取りながら、学生たちの「やりたい」という思いと、大学としての方針や現実的な制約との間をつなぐ役割です。



―― その役割で佐藤さんが課題を感じておられることは?


佐藤さん  最近は彼らから次々と出てくるアイデアの交通整理に悩んでいます。例えば、オープンキャンパス開始前の早めに来場した人向けの参加型企画や、高校生が履修登録体験できるシステムの開発を考えるなど、高校生の頃にオープンキャンパスを経験した彼らならではの素晴らしい視点の提案がたくさんあるんです。



―― それはどんどんやらせてあげたくなりますね。


佐藤さん  やる気は尊重したいけど、一方で「本当に全部できるの?」という心配も尽きません。彼らは学業が本分ですし、部活やアルバイトもしている。複数のやりたいことがある場合は、目的とか目標に適うプログラムになっているのかのコントロールも必要です。それに、私が答えに近いようなアドバイスをしてしまうのは彼らのせっかくの成長の機会を奪ってしまうのではないかと思い、彼ら自身で気づけるように問いかけをするのですが、結果的に思わぬ方向に議論が進んでしまったりして…これは私自身の課題でもあり、学生と一緒に苦戦しています。



―― 組織の人数が多くなると、出てくる意見も増えるし、モチベーションやスキルにばらつきもでて、管理する側は苦労が多いでしょうね。


佐藤さん  どうしてもトークスキルや接遇にばらつきが出るので、学生からも「勉強会を開いてノウハウを残したい」という声は上がっています。月1回のリーダー会でも話題にはなるのですが、学科ごとに時間割にバラつきがあること、みんな部活・サークル・委員会など、複数の団体に所属しているからこその忙しさもあってまだ実現できていません。



―― なるほど。学生たちのエネルギーは素晴らしいけれど、それを組織の力として生かすためのプロセスがもう少し必要なのかもしれませんね。

先ほど、組織が大きくなったことで生まれた、温度差や所属意識という課題を解決するために、「役割」を持ってもらうようにしたというお話がありました。これについて、ある事例をご紹介させていただいてもいいでしょうか。


ラーニングバリューが提供している『自己の探求』というチームビルディングプログラムの中に、興味深い課題があります。チーム全員が断片的な情報を持ち寄り、協力して一枚の地図を完成させるというものです。この課題の後にふりかえりを行うと、うまくいかなかったチームは必ずこう言うんです。「最初に役割を決めなかったから、失敗した」と。


私たちは小学校の頃から学級委員や図書係など、役割を決めて活動することに慣れています。組織的な活動=役割分担だと思い込んでしまっているのかもしれません。でも、うまくいったチームを観察すると、必ずしも最初に役割を決めているわけではありません。活動が進む中で、「あ、この人は絵を描くのが得意なんだな」「この人は情報を整理するのがうまいな」と互いの特徴に気づき、自然と得意な役割を担い始めていることが多いんです。


佐藤さん  わかります。今の学生間でも、得意な子が「じゃあ私これやるね」と自然に動いて進んでいくケースってありますね。



―― 「役割がないから参加しない」とか「暇そうだから役割を与える」という考え方もあると思います。しかし、別の角度から見れば、一人ひとりがどんな持ち味を持っていて、何が好きで、そもそも「なぜこの集団に入ってきたのか」という動機をお互いに知り合うことを大切にする、そういう方法もアリなんじゃないかと思うんです。「友達が欲しいから」「就活に有利だから」などなど、動機は何でもいい。それをお互いが深く理解し合うプロセスがあれば、役割は後から自然と決まっていくのかもしれません。 少し手間と時間はかかりますが、私はこの「相互理解」のプロセスこそが、組織をよくする上でかなり重要だと考えています。


佐藤さん  その視点を継続して持てていなかったかもしれません。今はそれぞれの係が動き始めていて、どの業務はどの係が実施するかなどの業務を割り振ることに意識が行ってしまっていて、彼ら同士の、学生広報スタッフに応募した動機を共有する機会や持ち味を知れるような交流の機会を十分に設けられていないように思います。



―― もう一つ、先ほど「スキル差を埋めるための勉強会」というお話もありました。これも「できる人が教えてあげる」という形式になりがちですが、別の提案があります。「ロールプレイングをして、互いにフィードバックし合う」という方法です。「教える」ことの弊害は、「教えられる」側が受け身になってしまうこと。しかも、佐藤さんがおっしゃるように、日工大生は真面目ですから、「お手本通りにやらなきゃ」とその人の持ち味が出にくくなってしまうかもしれないですよね。私の経験では、お互いにフィードバックし合うようなプロセスがあると、チームが強くなっていくんですよね。そうすると、自然と活動を辞める人も減ることにつながるのではないでしょうか。


佐藤さん  現状だと、先輩が個人的なつながりで後輩にアドバイスすることはあったり、年8回の研修会でスポットでロールプレイングを実施したりすることはありますが、継続的にそのような機会を設けられていないです。今後は学生間でフラットにフィードバックし合う機会を継続的に設けられるように考えていきたいと思います。



―― フィードバックは先輩から後輩へだけでなく、同級生同士、あるいは後輩から先輩にやってもいいんです。先輩も慣れでやっている部分を後輩に指摘されると、大きな気づきになります。 「お互いに言い合える関係」ができれば、組織は格段に強くなりますし、自然と辞める人も減っていくはずです。


佐藤さん  お互いの良いところを真似し合えますしね。学生間の「言い合える関係性」というのも今の組織の課題だと思います。リーダー会などの公式な場以外でも、他愛もない会話ができるような関係性をつくっていきたいです。



―― 組織としての課題はあるものの、成果も着実に出ていますよね。高校生のリピーターが増えているだけでなく、元参加者がスタッフとして入ってくる循環も生まれているとか。


佐藤さん  そうなんです。オープンキャンパスで対応した高校生が入学して、「あの時、先輩に優しくしてもらったので、今度は自分がやりたいです」といって入ってくれた1・2年生が活躍しています。これは担当者としてとても嬉しいですね。アンケートでも「親切にしてもらった」という声が多く、活動当初から掲げる「高校生ファースト」の想いが届いているんだと実感できます。



―― 素晴らしい成果です。一方で、学科や先生方との連携については課題もあると伺いました。


佐藤さん  学科には、受付、体験授業、研究室紹介、体験イベント等の学科プログラムを対応するアルバイト学生がいるんです。学生広報スタッフとは別動隊なので、研修を受けて本部で活動する学生広報スタッフと、学科で活動するアルバイト学生とでは、どうしても意識の方向性をそろえるのが難しいところがあります。学生広報スタッフは自ら希望して参加し、研修を通じて意欲的に活動している学生たちなので、両者の間に意識の差が生まれてしまうことがあり、そのすれ違いが、なんとも悩ましいところです。

来場者の多くは学科プログラムを目当てにオープンキャンパスに来てくれており、そのプログラムを担当するのは学科アルバイトの学生です。本来であれば、学科アルバイトの学生にもスキルアップの機会を提供し、来場者満足度や志願率の向上につなげていきたいと考えています。学生広報スタッフが受けている研修についても、「学科の方でもご希望ありましたらご相談ください」とお伝えしたこともあるんですけど、まだ具体的な連携には至っていません。お互いに強制はできないので、もどかしさを感じています。



―― 最後に、学生広報スタッフの活動や組織についての展望をお聞かせください。


佐藤さん  日本工業大学の学生の「成長」を表す存在となってくれることを期待しています。そして、この活動を就職活動のアピールにも使ってほしいし、社会人になってからも、学生広報スタッフで経験したことが役に立っていると思ってもらえたらいいなと思います。まだ組織化して2年目で体系化できていない部分もたくさんありますし、学生同士の衝突もありますが、問題を乗り越えた経験が彼らの中に残るはず。卒業後も誇りに思えるような組織にしていけるように、私自身も彼らに寄り添いながら、一緒に成長していきたいと思っています。


組織の立ち上げには強力なリーダーシップが必要だと思います。そのリーダーシップで立ち上がった組織が大きくなっていった時に必要なものは何なのでしょうか。

私はチームビルディングと言う考え方が非常に役に立つように思いました。

組織の様々な活動の中で相互理解を深め、互いの動機や目的を知り、互いの動機や目的を尊重しながらそれが組織全体の目標や活動目的と統合され、個々人の中で意味付けされていく。また率直なフィードバックの機会があり、深い相互理解が率直なフィードバックを促進し、それぞれが自己理解を深めていくことで、自分の持ち味や役割が自覚されていく。その一連の過程が個々の活動のエネルギー=モチベーションにつながっていく。チームビルディングとはそういうプロセスをたどっていくような活動のように思うのです。

そしてそのチームビルディングのプロセスをたどるためには、佐藤さんが最後におっしゃった「私たちも一緒に成長していきたい」と言うスタンスが何よりも大切なように思います。

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